鼻 Part 7

Download a PDF of the text.  223 KBHana by Akutagawa Ryuunosuke
View the text as a PDF by clicking to the icon on the right or download the PDF & MP3 in the download section.


 所が二三日たつ中に、内供は意外な事実を発見した。それは折から、用事があって、池の尾の寺を訪れた侍(さむらい)が、前よりも一層可笑(おか)しそうな顔をして、話も碌々(ろくろく)せずに、じろじろ内供の鼻ばかり眺めていた事である。それのみならず、かつて、内供の鼻を粥(かゆ)の中へ落した事のある中童子(ちゅうどうじ)なぞは、講堂の外で内供と行きちがった時に、始めは、下を向いて可笑(おか)しさをこらえていたが、とうとうこらえ兼ねたと見えて、一度にふっと吹き出してしまった。用を云いつかった下法師(しもほうし)たちが、面と向っている間だけは、慎(つつし)んで聞いていても、内供が後(うしろ)さえ向けば、すぐにくすくす笑い出したのは、一度や二度の事ではない。

内供ははじめ、これを自分の顔がわりがしたせいだと解釈した。しかしどうもこの解釈だけでは十分に説明がつかないようである。――勿論、中童子や下法師が哂(わら)う原因は、そこにあるのにちがいない。けれども同じ哂うにしても、鼻の長かった昔とは、哂うのにどことなく容子(ようす)がちがう。見慣れた長い鼻より、見慣れない短い鼻の方が滑稽(こっけい)に見えると云えば、それまでである。が、そこにはまだ何かあるらしい。

――前にはあのようにつけつけとは哂わなんだて。

内供は、誦(ず)しかけた経文を