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鼻 part 4

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 内供がこう云う消極的な苦心をしながらも、一方ではまた、積極的に鼻の短くなる方法を試みた事は、わざわざここに云うまでもない。内供はこの方面でもほとんど出来るだけの事をした。烏瓜(からすうり)を煎(せん)じて飲んで見た事もある。鼠の尿(いばり)を鼻へなすって見た事もある。しかし何をどうしても、鼻は依然として、五六寸の長さをぶらりと唇の上にぶら下げているではないか。

所がある年の秋、内供の用を兼ねて、京へ上った弟子(でし)の僧が、知己(しるべ)の医者から長い鼻を短くする法を教わって来た。その医者と云うのは、もと震旦(しんたん)から渡って来た男で、当時は長楽寺(ちょうらくじ)の供僧(ぐそう)になっていたのである。

内供は、いつものように、鼻などは気にかけないと云う風をして、わざとその法もすぐにやって見ようとは云わずにいた。そうして一方では、気軽な口調で、食事の度毎に、弟子の手数をかけるのが、心苦しいと云うような事を云った。内心では勿論弟子の僧が、自分を説伏(ときふ)せ て、この法を試みさせるのを待っていたのである。弟子の僧にも、内供のこの策略がわからない筈はない。しかしそれに対する反感よりは、内供のそう云う策略 をとる心もちの方が、より強くこの弟子の僧の同情を動かしたのであろう。弟子の僧は、内供の予期通り、口を極めて、この法を試みる事を勧め出した。そうし て、内供自身もまた、その予期通り、結局この熱心な勧告に聴従(ちょうじゅう)する事になった。


Read by Yumi Boutwell 2-24-08
Text from http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/42_15228.html

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