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Originally serialized in the Asahi Shimbun in 1908, Natsume Souseki wrote these ten short "dreams" in a surreal, dreamlike style. Weird, disturbing, and somewhat humorous, these short stories are like haiku—they hint at a much bigger story which is left to the reader to fish out.

If you like Salvador Dalí's artwork or the stories of Franz Kafka, you'll surely enjoy these very strange vignettes. But if you don't, well, the stories are absurd. Just like a dream. The do, however, make a great Japanese reader for intermediates of Japanese. They are short, well-written, and interesting enough to hold the reader's attention.

In the first night's dream (below), the dreamer tells us he sat at the bedside of a dying woman. She gives him a strange request. 

Listen while following along either with the Japanese only or the Japanese/English version.

  • Japanese
  • Japanese & English

第一夜


 こんな夢を見た。
 腕組をして枕元に(すわ)っていると、仰向(あおむき)に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭(りんかく)(やわ)らかな瓜実(うりざね)(がお)をその中に横たえている。

真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、(くちびる)の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。

しかし女は静かな声で、もう死にますと判然(はっきり)云った。自分も(たしか)にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から(のぞ)き込むようにして聞いて見た。

死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を()けた。大きな(うるおい)のある眼で、長い(まつげ)に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な(ひとみ)の奥に、自分の姿が(あざやか)に浮かんでいる。
 自分は()(とお)るほど深く見えるこの黒眼の色沢(つや)を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕の(そば)へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。

すると女は黒い眼を眠そうにたまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
 じゃ、(わたし)の顔が見えるかいと一心(いっしん)に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
 しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、()めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)墓標(はかじるし)に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また()いに来ますから」
 自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
 自分は黙って首肯(うなず)いた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓の(そば)に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
 自分はただ待っていると答えた。すると、黒い(ひとみ)のなかに(あざやか)に見えた自分の姿が、ぼうっと(くず)れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い(まつげ)の間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。
 自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな(なめら)かな(ふち)(する)どい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿(しめ)った土の(におい)もした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
 それから星の破片(かけ)の落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちている()に、(かど)が取れて(なめら)かになったんだろうと思った。()()げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。
 自分は(こけ)の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石(はかいし)を眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定(かんじょう)した。
 しばらくするとまた唐紅(からくれない)天道(てんとう)がのそりと(のぼ)って来た。そうして黙って沈んでしまった。

二つとまた勘定した。
 自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。

しまいには、(こけ)()えた丸い石を眺めて、自分は女に(だま)されたのではなかろうかと思い出した。
 すると石の下から(はす)に自分の方へ向いて青い(くき)が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと(ゆら)(くき)(いただき)に、心持首を(かたぶ)けていた細長い一輪の(つぼみ)が、ふっくらと(はなびら)を開いた。

 真白な百合(ゆり)が鼻の先で骨に(こた)えるほど匂った。

そこへ(はるか)の上から、ぽたりと(つゆ)が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の(したた)る、白い花弁(はなびら)接吻(せっぷん)した。 自分が百合から顔を離す拍子(ひょうし)に思わず、遠い空を見たら、(あかつき)の星がたった一つ(またた)いていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。


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